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ミニアルバム『夢うつつ』オフィシャルインタビュー

SIX LOUNGEがミニアルバム『夢うつつ』をリリースする。

今回はオフィシャルインタビューとして、音楽との出会い、制作背景、将来の野望(?)に至るまで3人にじっくりと語ってもらった。鬱屈した爆発力がシーンをブチ壊し、愛を求める切なさが時代をやさしく包み込む。日本語ロックンロールの革命は、ここから始まってゆくのだ。

取材・文:秋摩竜太郎

●ユニバーサルさんでインタビューを受ける気分はどうですか?(笑)
全員  ははははは!
ヤマグチユウモリ(Vo・G) 広いっすね、緊張します(笑)。

 

●まずは音楽との出会いからお訊きしたいのですが。
ユウモリ  中1ぐらいから斉藤和義さんを聴いてました。バンドを聴き始めたのは高校に入ってからですね。
Droogとか、シンタロウから教えてもらって、ベランダでこそこそ聴いてました。 それまではソロの人をよく聴いてて。アコギを始めたのが小学校の後半で、一番最初に弾いたのは井上陽水さんの「東へ西へ」だったんですよ。俺、じいちゃんがすげえ好きなんですけど、その時期に死んじゃって、なぜか葬式で「東へ西へ」を歌うっていう。初舞台が葬式でした。

 

●鮮烈なデビューだね(笑)。シンタロウくんはどうですか?
ナガマツシンタロウ(Dr) 音楽と出会ったのは小学校の時、おばあちゃんが聴いてたクイーンで。
ユウモリ    おばあちゃんがクイーン!(笑)
シンタロウ それで音楽やりたいなと思って、ドラムを始めました。ロジャー・テイラーがフレディ・マーキュリーよりカッコよくて、ドラムが一番いいなって。そこから高校に入ってユウモリに会うまではほとんど洋楽しか聴いてなくて。

 

●メタルやハードコアも好きそうだけど。
シンタロウ  はい、聴いてました。モトリー・クルーとかパンテラとか大好きで。逆に邦楽はナメてたんですけど、高校でユウモリとお互い聴いてる音楽について喋ってる中で、斉藤和義さんとかを教えてもらって、日本の人たちもカッコいいなってなりました。

 

●歌詞はいつ頃書き始めたんですか?
シンタロウ 高校に入ってからですね。ユウモリと一緒に音楽を始めて、曲を作る時に、よしじゃあ書いてみるかって。もともと本とか読むのも好きだったんで。
ユウモリ    俺が歌詞書くのは「ぜってえ無理」っつって(笑)、丸投げしたのが始まりです。
シンタロウ ユウモリが風呂入ってる間に書き終わりました。
ユウモリ    そうそう、俺ん家でな。懐かしい。

 

●斉藤和義さんに憧れたら、自分の言葉を自分で歌いたいって思いそうだけどね。
ユウモリ いやバンドってカッコいいぐらいしか考えてなかったんで。マジなんかモテそうだなと思って。ほんとそんな感じでしたよ。何か伝えたいことがあって始めたというよりかは、自分の内側より外側を観られたくて始めたんで。

 

●そうなんだ。リクくんはどうですか?

イワオリク(B) 音楽の入り口はあんま覚えてないんですけど、そもそもベースとギターの区別もついてなくて。テレビを観てた時に、たまたまレッチリ(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)が出てて。『I'm with You』の頃だったかな。そこでフリーが一番目立ってて、カッコいいなこの人と思って、調べたらベースっていう楽器を弾いてると。

 

●もしそれがジョン・フルシアンテのいる時期だったらギターを始めてた気がする(笑)。
リク       俺もその説はあると思います(笑)。そっから洋楽をいろいろ遡っていって。あと親の影響かわかんないですけど、ビートルズとかも知らないうちに知ってましたね。で、高校に入ってすでにSIX LOUNGEを結成していたふたりに会ったら、ロックバンドの話っつーか、まず「俺らのライブ来いや」みたいに言われて(笑)。入学したての時に。チケットが売れねえから。

ユウモリ お客さんとしてね。

 

●てか都合のいい後輩みたいな。
ユウモリ そうっす(笑)。売れない時はとりあえずリクに「来い!」って。
リク       俺も洋楽しか聴いてないから邦楽は認めないみたいな時期があって。中二病みたいな感じだったんですけど、やっぱ生でライブを見たらカッコいいなって。そっから日本語のバンドをいろいろ教えてもらって、ミッシェル(THEE MICHELLE GUN ELEPHANT)にハマって、みたいな感じですね。

 

●当時はどんな先輩ふたりでした?
リク          ユウモリはやさしかったですね(笑)。
シンタロウ (笑)。
リク           ……シンタロウは、年に10回ぐらいしか喋ってなかった気がする。
ユウモリ    喋ってたよ。
リク         うっそー? でもちゃんと会話した記憶がないっすね。ユウモリはよく学校帰りとか、ラーメンおごってくれてました。いい先輩でした、今思えば。
ユウモリ    今は亡き?
リク          そう(笑)。

 

●シンタロウくんは誰に対してもそんな感じだったの?
シンタロウ 基本的にコミュニケーションが……(笑)。
ユウモリ    たぶん成人男性の半分くらいしか喋ってないです。

 

●高校はクラシック寄りの学校だったんですよね。その中でロック好きのはぐれ者みたいな存在でした?
ユウモリ   そうですね。授業とかほぼ「めんどくせえ」しか思ってなくて。高校選びも行けるところがなくて渋々……みたいな感じだったんで。でもバンドをやってる時は楽しかったですね。
シンタロウ 俺も一緒ですね。みんな嫌いでした(笑)。

 

●(笑)SIX LOUNGEの音楽にはさ、鬱積した苛立ちや虚無感を爆発させるところがあるよね。それは学生時代の記憶とか、そもそも大分という土地に関係があると思うんだけども。
ユウモリ そうっすね。高校生の時のリード曲が「第一次世界母乳大戦」ってタイトルでしたから(笑)。
リク      一番好きだったけどな〜。

 

●やばいね(笑)。今回の曲で言うと「くだらない」とかさ。《イライラと夜をみつめてる/愛想もない月の明かりだけが/期待で渇いた寂しさと/心の闇を照らしている》、これってまさにそうじゃない?
シンタロウ 「くだらない」は大分が大きいですね。実家に戻って、自分の部屋で書いたんですけど。ちょっと寂しいっていうか、部屋にひとりでいる感じ。酒飲んでる時の感じだったり。あとそん時読んでた本が太宰の『斜陽』だったのもあるし。

 

●『斜陽』を読みたい気分だったってことだ。
シンタロウ それがすごいしっくりきて。街に出ても人がいなかったりしますし。家の周りも住宅街っていうか、何もないんですよ。普段呑んでるところと比べたら全然明るくないし。ほんとに真っ暗で、けっこう星が見えるんですよ。そういうひとりの時にいろいろ溜まることが多いです。溜まるとどうしようもないですよね。ライブがあれば別だけど、オフで大分にいる時はキツいです。

 

●そういう気持ちが爆発力につながってると思うし、もうひとつ、愛にもつながってる気がします。
シンタロウ ……愛?(笑) なんかでも、落ちてるとこがあるから楽しいとこもある感じはあります。「ORANGE」の《どうしても/ダウナーな/この夜の/主役は誰だ》があるから、「SWEET LITTLE SISTER」みたいな曲ができたり。

 

●そう、愛を求める感じっていうかさ。
シンタロウ 誰かといたいです。そういう気持ちはありますね。
リク          愛を探してる感がありますよね。『夢うつつ』の歌詞を見てても、あんまり幸せそうじゃないというか。それはシンタロウっぽいなと思います。
シンタロウ 幸せな成分はない(笑)。

 

●うん。でも「誰かといたい」ってみんなも思うことだから、いろんな人に響くんだと思いますね。あとSIX LOUNGEにはセンチメンタリズムがありますよね。日本語の歌詞もそうだけど、ユウモリ君のメロディと曲にも。
ユウモリ 単純に切ないメロディやコード進行が超好きっていう。

 

●なぜ好きなんでしょうね?
ユウモリ なんでなんですかね、めっちゃよくないですか?(笑) 人の曲を聴いてそういう気持ちになってる時間が好きなんで、そういうことなのかな。けっこう曲に左右されるじゃないですか。ドカーンって激しい曲を聴いたら強くなった気分になれたり、切ない曲を聴いたらそういう気持ちになったり。だからそういうメロディが好きになったのかな。あと人の少なさで言えば大分自体が切ないですよね。マジ俺の実家に帰る道とかヤバいですよ。超暗くて。夜中に駅から帰ると真っ暗で、隣に老人ホームもあって切ないです(笑)。

 

●なるほどね。では改めて『夢うつつ』についてですが、レコーディングはいつ頃してたんですか?
リク    去年の5月とかじゃなかった?
シンタロウ 8月とかじゃない?
ユウモリ  うーん、一気にやったというよりは、けっこうポツポツだったんですよね。曲できて録って、できて録ってみたいな。

 

●「くだらない」について聞かせてください
ユウモリ 「くだらない」は作ってる時からリードになるかなと思ってて。珍しいパターンなんですけど、Aメロからできたんですよ。いつもはサビとかイントロからできるんですけど。そのAメロがもうめっちゃ好きで。たしかスタジオでそこだけ合わせながらサビを見つけていった感じです。

 

●Aメロのペンタトニックに収まらない部分が切ない要素だよね。
ユウモリ そうなんですよね。ちょっと違和感があるというか。いいっすよね。

 

●いいし、歌い方も今までにない感じじゃない?
ユウモリ そうっすね、ふわっとしてるというか、優しめというか。空気感を大事にしました。

 

●抱きしめる感があると思います。
ユウモリ マジっすか(笑)。

 

●メロディができてから歌詞を書いたんですか?
シンタロウ 曲が形になってからですね。サビかCメロから書いて、そこはすごいハマったんですけど、Aメロは逆にどうしようかなと。

 

●それはすごい納得です。Cメロの《バカバカしくて/おかしくなるよ/悲しいからそばにいて/夕陽を見上げてどうしようもなくなっていた/くだらないだろ》って一番言いたいことだもんね。この曲では《革命》という言葉を使ってますが、それはどうして?
シンタロウ なんつったらいいんすかね……使いたかったんですよね。イメージとしては、この曲にはふたりの人物が出てくるんですけど、そのふたりにとって正しい何か、理想みたいなものですよね。
ユウモリ 俺は勝手に、《革命は今どこでおこっているか/俺たちにはわからない》ってのは、いろんな世の中のことなのかなとも思ってました。

 

●そう解釈することもできるよね。あとはシーンに対する革命とも捉えられるけど、きっと——。
シンタロウ はい、俺のイメージはふたりの中での革命で。でも、結局このままでもいいよねっていうとこでもあるっていうか。結局手は届かない、でも現状も愛しい、そういう気持ちもありつつっていう。

 

●その幅と歌い方やメロディがこの曲を大曲にしてると思います。「LULU」はどうやってできたんですか?
ユウモリ    唯一スタジオでジャムって作った曲です。わりとパパッとできて。シンタロウが「叩きたいリズムがある」って言って始めたやつに、ふたりで合わせていって。
シンタロウ これ難しいです、ドラムが。やりたいと思って叩いたリズムなんですけど、ちょっと技術が追いつかない(笑)。
リク         てかこれ、最初はこのCDに入ると思ってなくて。単純にセッションしてみようって曲だし、俺も大したことしてないし。まあ全部大したことしてないですけど。でも結果、考えて作った曲じゃない衝動的な勢いがあるんで、カッコいい曲になったなと。

 

●言ったらロックンロールって大したこと必要ないじゃん。で、リクくんは弾き姿も含めて普通のエイトビートをどんだけカッコよく弾けるか、みたいな部分を一番問われるポジションなんだろうね。そこで勝ち続けてるとも思いますし。
リク   そうっすね。でも弾いてる時、ほんとはあんまり動きたくないんですよね。将来的にはもう仁王立ちでやりたいです。立ってるだけでカッコいい存在になりたい。それが究極ですよね。でもまだ全然なんで、熱量とか、がむしゃらにやることでカバーしてますけど。持ってるものが、遺伝子があまり優れたものじゃなかったんで、努力するしかないっすね(笑)。
ユウモリ はっはっは!

 

●いやいや、ロックンロールの遺伝子を持ってるからそういう理想像を抱くんでしょ。
リク たしかに考え方はそうかもしんないです。

 

●今回はリクくんが「SWEET LITTLE SISTER」を作曲してますけど、どんな経緯だったんですか?
リク まあギターで簡単なメロディを考えたりっていうのは遊びでやってたんですけど、新曲を作るってなった時に、「なんかない?」みたいに言われて。「全然完成してないけどこういうのあるよ」ってスタジオでやったら、ふたりが意外に真剣にやってくれて。絶対「ふざけんなよ」とか言われると思ったんですけど。それで曲として作ってみようかなって。いろんなとこから寄せ集めたみたいな感じですけど。

●ザ・ロックンロールだよね。
リク そうっすね、自分が好きなのを集めて。ちょっとくどい感じもしますけど。

 

●これでくどいって言ったら聴けないバンドたくさんあるよ(笑)。ユウモリくんが「曲ない?」って訊いたの?
ユウモリ はい、作品を作りたいってなって、単純に不安になりました。そんなに曲作れるかなみたいな。で、とりあえずリクに投げてみようと。これは今までにない感じの曲なんでよかったと思います。たぶん俺だったらもっと考えちゃうんで、自分では作れない曲ですね。

 

●僕が思うSIX LOUNGEのすごいところは、明るい響きでわかりやすい言葉をドカーンと歌うだけで最高にカッコよくなるところなんですよ。それって選ばれた人間にしかできないと思うのね。そういう意味で「SWEET〜」が入ってるのはいいし、「STARSHIP」もさ、基本はスリーコードでしょ。でもDm(キーA)を使ってるよね。その切なさが新しいロックンロールたる所以なのかなと。
ユウモリ マジっすか! でも癖なんですよね、メジャーからのマイナーが好きで。すでに今作ってる曲もすぐマイナーに行っちゃって、やべどうしよって思ってるくらいで。

 

●どんどんやってほしいですね。しかし『夢うつつ』、素晴らしい作品になりましたね。
ユウモリ     毎回思うんですけど、アルバムを作ろうとして曲を作ったんじゃなくて、その時その時にリード曲を作るぐらいのつもりで作っていったので、カッコいいものになったなと、思いますた(笑)。
リク          俺も一緒ですね。曲はいい意味でまとまってないし、でもシンタロウの歌詞とか『夢うつつ』っていうタイトルで締めくくった感もあるんで。移動中とかに聴いてても、自分でカッコいいなあと思えます。
シンタロウ すごいバランスがいいし、好きです。カッコいい。

 

●最後に 一般的な言い方ではメジャーデビューということですが、心境を訊かせて下さい。
ユウモリ でも環境はなんも変わらないので、たぶんリリースしたあとに実感するんだろうなと思うんですけど、こういうふうに集まって話したりとか、こんだけの人が動いてくれてるんだなっていうのを見ると、うれしさみたいなものは感じます。
リク      聴こうと思ってない人でも耳にしてくれるチャンスが増えたと思うんで、その分がんばんなきゃなと思います。単純にうれしいんですけど、それだけじゃないような、突き詰めなきゃいけない感はありますね。

 

●シンタロウくんはどう?
シンタロウ ……特に(笑)。

 

●はははは。メジャーだからどうっていうか、やってやるぜ的な気持ちは常に持ってるってことだろうね。
ユウモリ そうっすね。そこは変わらないです。

 

●デビューしたらやってみたいことはありますか?
ユウモリ いっぱいありますけどね〜、「しゃべくり007」に出たいです(笑)。あと「ガキ使」! あと「ゴッドタン」!
リク       「ゴッドタン」出たいね!
ユウモリ マジ歌選手権!
リク       ほんとのマジやん(笑)。
ユウモリ あとキス我慢選手権!
リク       だったら「テラスハウス」に出てえな。
ユウモリ マジ? 俺は「ペロペロハウス」のがいいなあ(笑)。

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